そして、この家は四季折々にいろんな発見があった。

枯れていた山が芽吹いて緑いっぱいになり、また秋がくる、という季節の変化だけでなく、なんと言っても隣のお宅の庭には随分いい思いをさせてもらった。

冬に即決した物件なので、何にも咲いていない、葉っぱもさびしい木しか見ていなかったので、全部が思いがけないおまけ。季節がめぐるたびに観光客みたいに喜んでいる。

春には桜が咲き、夏には見事なアジサイが咲き。
そして、今、どこにあるのかわからないのだが、キンモクセイもあるようなのだ。

私はキンモクセイの香りは子供の頃から大好きだった。
家にほんの一本あっただけだが、すごくいいにおいがした。
今この辺りを歩くと、さすがにいろんな所に見事な大きい木があって、ずっと香りを楽しめる。
でも、何より、家の中が一番香っている。
今や畳の影がうすいくらいなのだ。

雨音が気持ちよくて、涼しいけれど窓を開けていると、家中に甘い香りが満ちてくる。
なんだか色々考えなきゃならないことがあったはずなんだけど、トロっとして解放されていた。

アロマテラピーなんていうと、乙女チックでこっぱずかしいけど、こうして甘い香りに包まれていると、香りの力を感じずにはいられない。

考えるなんてことを飛び越えて、直接何か作用してしまうところがある。

いつまでこうしていてくれるのかな、なんて雨を眺めながら、このままだと、何にもせずに夢心地で日を過ごしてしまうなあ、なんて怠け者の私が心配でもある。
う〜ん。でも、その心配もトロっとした空気のずっと向こうにいっちゃうんだよね。

書家・美術家 金子祥代 Kinkoちゃん随筆 
http://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中