今年一番の感動は、実はこれなんです。

硯をじっくりゆっくり試してみたい。

それをずっと思ってきたのですが、ふらりと寄ったお店ではできないし、時間もゆっくりかけたいし、ということでずっとできませんでした。

今年はかなりその気分が高まっていました。
で、4月の青山展に来てくれた若きイケメン硯職人さんにもそのことを話していたのですが、12月になってやっと実現しました。
やったー!!
やっぱり大好きなオダギリジョーに似てる〜。
あ、そっちじゃなくて・・・
先に連絡してあったので、お店に着いた時にはいくつかピックアップした硯がテーブルに載っていました。
見るからに良い物もあって、テーブル揺らしたらどうしよう、なんて思っていると、さっそく説明を始めてくれて、たっぷり3時間もつきあってくれました。

Kinkoは7歳から書道を始めているのですが、恥ずかしながら「いい硯」は展覧会場で眺めたことしかないのです。師匠から話は聞くものの、普段会えない距離なので、触りにいけないし。
端渓とか老坑とかいう言葉は聞いていても、なにせ見たことしかないので、あくまでアンティークとして見た目の趣くらいの良さしかわかっていませんでした。

で、説明を受けながら、手にとって裏も表も眺めて、手のひらで触ったり、水をたらしたり、色々体験した後、とうとう「磨ってみますか」の一言が。

私のような素人にわかるのかな。わかんなかったらどうしよう。なんて思いながらも墨をあてると、なめらかな素敵な感触、手から伝わる感触で心がとろけそうになりました。そして、さらに、別のいい墨をすると、ムスクの香りがたちのぼり、指に伝わる感触と相俟って、全身に感動が走りました。こんな墨と硯を持っていたら、書くどころか墨をすっただけで満足してしまう・・・

―うっとり

人生の分かれ道で違う方の道を歩き出した気がします。

毎日手からあの感触を味わう人生は、そうでないものと全く別の未来を約束してくれる、それだけは、はっきりわかりました。
きっと、それまでの私だったら、こんなことを言う人がいても、「大げさな・・・」って思ってた。でも、そのうっとりした瞬間の興奮が、新幹線に乗って神戸に戻っても続いていて、あの感触が日常になる日をうっとり夢見る毎日なのです。シ・ア・ワ・セ☆

書家・美術家 金子祥代 Kinkoちゃん随筆 
http://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中