日本の記事を見ていると相変わらずせちがらい話題ばかりです。

弱者救済も大事だけれど、お金持ちを潰してしまったら手をさしのべる人までいなくなってしまいます。

がんばった人ががんばっただけの報酬をもらうことがなくなったらがんばる人もいなくなってしまう。

なのに貧しい論調ばかり見かけると危機感がつのります。

無駄遣いはいけない。
でも何が無駄で何が無駄ではないのか。

その線引きを間違えるととんでもないことになってしまう。

たとえば文化。

美術品もエンターテイメントも生活必需品ではありません。

だから無駄?

人間の中身にとっては食べ物の栄養と同じかそれ以上に大切なもの。
本当にお金がなくて困っているときでも、一枚の絵に心が救われる時もあります。
それはフランダースの犬のネロにとってのルーベンスみたいな寓話だけのことではありません。
小説が事実を書いているんです。

そして、文化にはお金が要ります。

質のよいものでなければ人の心に響かないけど
よいものをつくるにはお金が要ります。

人口が減っても世界一のメーカーが減っても
日本が魅力ある国として残っていくには文化の力が必要だと思います。
賢い先人たちのおかげで素晴らしい文化遺産のある国ですが、
現在の私たちの接し方ではそれを守ることも未来を生むことも難しい。

海外への発信にしたってクールジャパンとかいって
あたかも日本の文化が世界に受け入れられていると錯覚させられていますが、
あくまでも漫画アニメやラーメンといった庶民文化だけの話で
日本のファインアートや、本当の和食やお茶といったものの真実は伝わっていません。

浮世絵が認められた。
春画は海外がすごい芸術だと言ってるから解禁しろ。

なんて言って浮かれている場合ではありません。
日本人にとってたかだかそれは雑誌のレベルの存在だったのです。
ほとんどは美術として伝えたのではなくて包装紙として国を渡ったのだから。
それですら
外国人にとってはレベルの高いセンスと技術を備えていたというだけのこと。
我々にはその上がある
ということを忘れてはいけないし、
そろそろそこを発信していかないといけないのです。

お隣韓国などはポップスやドラマの海外輸出を国を挙げての戦略で成功しているのはよく知られていますが、
彼らはファインアートも忘れていません。
各国に韓国人アーティストの作品展示ができるギャラリーを設けて、そこに現代アーティストだけでなく国宝級の李朝の器を同時に展示するようなことをしています。その一つの壺が動員を増やすそうです。数だけではなくお客さんの質も高くなる。興味の持ち方も変わる。

もっと地に足をつけた文化政策がないと・・・

日本には今でもいい作り手はたくさんいます。

でも受け手がいない。

「鑑賞者」が育つ教育をしないといけないし、
作り手を育て守る意識と財力を持ち続けないといけません。

そのためにはお金持ちをひがんで潰すっていう単純な発想を持つ人ばかりが増えてはいけないんです。
お金持ちが減っても減った分がみんなに上乗せされるわけじゃないのに。
全体が貧しくなるだけのことです。

貧乏人から搾取することはいけないけれど、正当に頑張って得た人の収入はきちんと守って健全に使ってもらわないと。

確かに美術に理解の深そうなヨーロッパでも美術家にとってせちがらい状況が増えている流れは否定できません。

なかでもスペインはバブルがはじけた後のどん底をやっと抜けたところ。
個人の平均収入は日本の半分以下とも言われます。
でも!
そんなスペインの現代アートのマーケット売り上げが日本とほぼ同額。
どう思います???
人口だって日本の半分以下なのに。

無料で入れる美術館もいっぱいあります。

日本。これでいいんでしょうか?

母国が真の意味で豊かになることを願ってやみません。

書家・美術家 金子祥代 Kinkoちゃん随筆 
http://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中