12雨

雨   と聞いて何を連想されますか。

先日作品を扱っていただいているギャラリーに送った作品の中に一点「雨」と小さく一文字書いたものを入れました。
オーナーさんからは「とてもいい作品で気に入ったけれども、雨という題材で売れた実績がないので迷っている」との連絡をもらいました。
お客様の中にも雨というのはマイナスイメージとしてとらえられる方が多いようです。

ところが私は子供の頃から雨が大好き。

雨が降ると家中のカサを持ち出して全部広げ、家の前の道にひとかたまりにして並べては「カサの家」と言ってその中に入って楽しんでいました。

高校生の時も、駅から学校までいつもは自転車で通う道を雨の日はバスを使うのですが、時間を気にしなくていい下校の時はだれも誘わずわざと一人で、普通でも30分かかる距離をできるだけ遠回りしながら、わざわざ傘をさして歩いて駅に向かったりしていました。

もちろん濡れるのは好きではありません。車に泥をはねられてブルーになったことも数え切れず。
電車の中で傘の置き場に困ったこと、満員電車が蒸し風呂のようになったこと、何より歩くのが下手で人一倍パンツやスカートの裾に泥をはねては洗っていたこと。
たしかに考えてみればマイナスもいっぱいです。

ではなにがいいのだろう。

雨音。

朝起きたときに雨の音がして、音の中に心をひたしていた記憶。
すべての汚いものが見えなくなって、空気の中の塵もすべて洗われたようなとても落ち着いた気持ちになった記憶。

いつからか雨が降ってもあの音が聞こえなくなってしまったけれど、薄いガラス窓を通して聞こえてきた雨音の中での記憶が今でも蘇るのだと思います。

「カサの家」では屋根にあたる雨の音を、駅までの道でも、カサにあたる雨の音を楽しんでいたのです。

まだ運転し初めのころ、雨の中、車を走らせていた時にラジオからの初めて聞くメロディーに惹きつけられました。
なんて心地よい曲なのだろうと思って聴いていると、曲の終わりに紹介があって、カーペンターズの「Rainy days and Mondays」だとわかりました。

「雨の日と月曜日はなんて憂鬱なのって歌ってるだけの簡単な歌なんだよね・・・」とDJが笑っていましたが、私にはやっぱり心地よくて、今でも気がつくと口をついて歌っていたりします。

そしてこの曲が雨の日に聞くと格段にいいと思うのは私だけでしょうか。

忙しい日が続くと雨にうんざりされる方も多いでしょう。
私も最近、カサをさしながら、音など聞いていられないくらい先を急いで歩いている自分に気づきました。

今度雨が降ったら、その日は心をオフにしてゆっくり雨の音に耳を傾けたいと思っています。

☆「心の相談室」のバックナンバーです。「心の相談室」Kinkoのエッセイ集目次はバナーをclick♪banner-kokoro

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/