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さて思っていると叶うもので、初めてアートフェアに出展する機会を得たのがベルギーでした。

アートフェアというのはギャラリーの見本市なのでアーティストが自分でエントリーすることは基本的にはできません。
ですから今回の出展もギャラリーが私の作品を出そうと思わないと並ばないわけで、それがベルギーになったというのも運命としかいいようがないのです。

アーティスト自らが会場にいなければいけないこともないのですが、今回は初めてということで勉強のつもりで現地に行くことにしました。
もちろんベルギーへの興味もありましたから。

いつも通り、あくまでも目的地のゲントにフォーカスして調べていました。
ところがKLMからのチケットが,
帰国の際はアントワープからアムステルダムに出て日本へ。
というルートに変更になり、これまた偶然にもアントワープへ行くことになったのでした。

そんなわけで移動のために生まれた空き時間を利用してノートルダム大聖堂のみならずホーボケン村まで行ってネロが毎日牛乳を運んだ行程を4キロばかり歩いてみたりもできました。

さてさてベルギー人は本当に親切なのか。
第二の疑問を検証しましょう。

答えは簡単。イエスでした。どこへ行っても実に快適に過ごせました。

一番印象に残っているのはトラムでのこと。

着いたのは夜。
真っ暗な中、駅からタクシーでホテルに行きましたが、翌日はトラムに乗ってみることにしました。
「ホテル出たらすぐ乗り場だよ」と勧められて向かうと、本当に近く、しかも目の前に乗るべきトラムがとまっています。
乗り場の名前も見ずに飛び乗ってしまいました。

そう、乗り場の名前も見ずに。

その失敗に気づいたのは夕方帰るときのトラムの中。
何番のトラムに乗ればいいかは聞いていたけれど、どこで降りたらいいかわからない。
ホテルの周りの景色もまだちゃんと見ていない。

どうしよう・・・。

町の詳細な地図ももらったけれど、トラムは線がひいてあるだけで乗り場の印も名前も書いてありません。
真っ青になりながら必死で地図をながめますが、オランダ語の名前は記号みたいに見えてくらくらします。
どうにかこうにかホテルの前の通りの名前をみつけて「きっとこれだ!」とやまをかけ、トラムが止まる度に必死で電光掲示板を見ていました。
目指すは

ファイフワインドホウスシュロラアトという名前。

とても初めてで聞き取れる名前じゃないし、合っているかもわからない・・・
が、はっと見ると今書いてあるのがその名前のようです。
扉が閉まる間際に地図も広げたままあたふたと飛び降りました。

セーフ!!!

ところがトラムは発車しません。

何かな?と思いながらもホテルの方角を探してホームを歩き始めました。

ちょうどトラムの先頭あたりに来た時、運転手が扉を開けて手招きしました。

周りには私しかいないので近づくと、「ここでいいの?」と聞かれます。

わからないので「ホテルはここです。」と地図を見せました。

するとじーっと眺めた後、運転手さんは「よしっ!」と頭を振り、安心してトラムを出発させたのでした。
その間トラムの中に「はやくしろ」なんてせかす乗客は一人もなく。

そんなことをいろんなところで体験し、「ゆとり」について考えさせられました。
急いで走っている人やカリカリした人を見なかったなぁ。
本当に印象のいい国でした。

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【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
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