18 力を抜いて

力を抜く――これって一番難しいことなのですね、実は。

ラクをするのはみんな大好きなのに、どうして力が入ってしまうのでしょうね。
疲れてしまいますよね。

驚かされるのは「書道をやると肩が凝ります」という方がたくさんいらっしゃることです。

中には筋肉痛になったなんていう話もあって本当に驚きます。
実際教室で一番注意しているのは「肩に力が入っていますよ」とか
「手首の力を抜いてください」
です。

初めて言われる時はみなさん意外な顔をします。

書道は息を止めて力いっぱい線を引く、と思い込んでいる方が圧倒的に多いのです。

でもそんなことをしていたら時には一日何十枚も何百枚も書く書道家さんたちは酸欠になってしまいます。
筆は弾力があって、そのおかげで一本の筆が多彩な線を生んでくれるので、力を入れてこすりつけてはダメなのです。

それに誰でもせかせかしたり苦しそうな何かを見るより、ゆったりとしたものを見る方が気持ちがいいでしょう?

書の線も同じです。
スピードの問題ではなくモーションにゆとりがあったほうが見ていて気持ちのいい線が生まれるのです。

それは多分書道だけのことではなくてみなさんがご存じの何か、テニスでもゴルフでもスケートでもダンスでも部分的に硬直させたり負荷をかけることはしない方がうまくいくのを思い出してください。
もしまだうまくいった経験がなくても、上半身の力を抜いて、とか手首を動かさない、とか先生に言われたことがあるのではないでしょうか。

筆の持ち方は、まず上体をまっすぐのばしてリラックス。
筆は箸を持つ要領で筆管の上の方を薬指に載せます。
そうすると掌は自然なふくらみをもっていますね。
その状態を保ったまま墨をつけて運びます。手の甲はのばさないように。
腕から手の甲が一直線になる持ち方だと急に腕に力が入ります。
あくまでも手首から先は力を入れないでください。

書き始めると急に掌をギュッと握ってしまう方がいらっしゃいますがそれはNG。

よく卵を掌で包んでいるつもりで、と言われますが、ある先生は
「みんな生卵だと平気でつぶすから『ひよこがいるつもりでやさしく』と言うのだ」とおっしゃっていました。

それはいい!と思ってさっそく実行。

たしかに卵と言っていた時よりやさしくなりました。
但し大抵は、です。
中には気づいたらギュッと握ってしまっていて、そこにいるかわいそうなひよこを想像したのがトラウマに・・・というくらい頑固に握ってしまう人もいましたから良し悪しでして・・・。

椅子に座って書くときは腿をくっつけて座ってください。
足がだらしないと上体がピシッとせず、やはり手だけに力を入れて書くことになります。
私は右足を少しだけ引くようにしています。
これは包丁をもって料理する時と一緒で自然な状態で長い間右手を動かすことができるからです。
見た目もきれいになりますからおすすめですよ!

正しい姿勢で線がひけるとスカッとします。書の稽古は疲れることじゃなくって気持ちのいいものです。多くの方に体感してほしいなあ。

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【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
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