20 ハーモニー

調和というのは美しいもの。
日本の社会では人と人との間にも和を尊びます。

でも人と合わせることに疲れちゃう。そんなこともありますね。

では、それは本当の調和なのでしょうか。

最近ラジオで流れたジェームズ・マクミラン作曲の合唱曲の美しさが心に残り、さっそくCDを探して購入しました。同じ曲は入っていなかったのですが、やはりとても美しく聴き入っています。その中には彼のオリジナルとともに昔からあるミサ曲が収録されています。

そこで私の胸をゆすぶった音。それは不協和音でした。

  不協和音

音がきれいに溶け合う和音とは対照的に音が調和せずぶつかりあう組み合わせのことです。
一般的な文脈ではこの言葉が不穏な場面をあらわすのに使われていることが多いですね。

しかし不協和音を敢えて使っている楽曲が戦後ずいぶん発表されました。
前衛音楽と呼ばれるものに多いと思います。
この辺は私は詳しくないので専門家にゆずりますが、私は大学時代、合唱団に入っていたので不協和音が出てくる現代音楽も何曲も歌いました。
三善晃の作品やオルガン奏者への委嘱作品がとても印象に残っています。
簡単に言うと、作るのにとても苦労し、完成したときに大きく報われた曲たちです。

その原因はすべて不協和音。とにかく難しいのです。

きれいな和音の時は自分の音を覚えていなくても慣れている人ならば他の人の出す音を聞きながらなんとなくそれに添う音を探せたりするのですが、不協和音ではそうはいきません。

調和しないのですから。

しかも他の人に合わせたくなるのが人の性。
他の人の声についついひきづられてしまったりします。
人の声は耳で聞いた音が出す音に影響しやすいので大変です。

しかもちょっとでもずれた音を出せばその集合はきたない雑音。

一人ひとりが自分の出すべき音をしっかり正確に出すことによって初めて不協和音が成立します。

本当に大変な練習が待っていました。
しかもまだ経験が浅い私たちには完成の姿をイメージすることもできず、大変なばかりの練習。

しかしです。

完成した時、その音の集合はものすごいエネルギーを発散したのです。

音が強くひとつひとつの色を強めながら大きく飛び散ったのです。

それはうれしいとか悲しいとかいった言葉を超えた深い心の奥の感情を揺さぶる音でした。

ふつうのハーモニーにはない強い力を持った美がそこにはあります。

こういった姿は人の生き方にも言えるのかなと先ほどのCDを聞いていて思いました。
一人ひとりが正しく自分のするべきことをするならば、その一人ひとりの集まりは、ただ調和しようとする集まりよりも神々しい光を放つのではないか。

一生懸命自分をやりたいなと思いました。

自分勝手の薦めではありません。
自分だけができればよいのではなく、全員がそれぞれの自分のやるべきことを正しくしっかり果たしてこそのエネルギーです。
より高度なチームワークと言えるでしょう。

そして、それができる個がふつうのハーモニーを奏でる時、それはゆとりある美しいハーモニーになります。とても心地よいハーモニーです。それこそが本当の調和ではないでしょうか。

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