25 タイムトラベル

私は子供と写真を撮るのが嫌いです。なぜなら・・・・・・・・老けるから。

まさか子供たちと年をはりあっているのではありません。
でも、どうしても子供たちと接する時には責任感が伴って、保護者の顔になってしまうようで普段より老けた顔に写るのです。

だから生徒たちの写真はかわいくてついつい撮ってしまうし、一緒に撮ろう!と盛り上がるのだけれど、後でがっかり。
いい写真だけどこの顔は嫌い。
年をとることが嫌なのではなくて妙に大人顔になっている自分が嫌なのです。
大人の責任は大事だけど気分はいつも子供たちと同じ方を向いているつもりでいるから。

それに対して同窓会の写真は大好き。あの頃よりみんな年をとっているけれど、みんなの気持ちがあの頃に帰っているのがわかるから。
地元で写真屋を継いで、同窓会当日も大活躍してくれたカメラマンが言いました。

「最初は誰だかわかんない人が多かったんだけどさあ、
笑うとわかるんだよ。」と。

みんな10代の時の顔に戻って笑っているのです。

私の少女時代はSFが大ブームでした。
「タイムトラベラー」なるドラマのノベライズ本を近所のあこがれのお姉さんに借りた時は初めて知った「タイムトラベル」という言葉と概念にどんなに胸が高鳴ったでしょう。
その頃のSFはとても質が高くて、タイムトラベルをむやみにしてはいけないこと。行った先でその時代に影響を与えてはいけないこと。などとても真面目に、ある種の寂しさをともなって表現されることが多かったように思います。

そっと見るだけ。

でも、たったそれでも憧れの気持ちがどんなだったか。
「タイムトラベラー」はNHK少年ドラマシリーズの初期の名作で、あまりの人気にノベライズされたそうですが、私が知ってから再放送されることはありませんでした。
挿入されていた写真を見て想像するしかなく、いつか放送されないかなあと思うことしかできませんでした。
随分たって、現在NHKは多くの過去の作品をDVDやHPで見られるようになりました。
少年ドラマシリーズのDVDを知ったときには飛びつきましたが「タイムトラベラー」は古すぎてほとんど映像がなく、音だけのラジオドラマのような状態。
それでも何十年もたって初めて見た「動いている」ケンソゴルと和子には子供の心にもどって感激しました。

そう。まるでその時代に帰ったみたいに。

お姉さんから本を見せてもらった時の情景や、ドキドキしながらページをめくった気持ちがそのままよみがえったのです。

タイムトラベルしてみたかったっけ。

でも、今、これってタイムトラベルじゃない?

超能力を持ったり、ラベンダーの温室に行ったりしなくても。ドラえもんがいなくたって、たった一つの何か。誰かからの手紙。あの頃の音楽。それがタイムマシンになってる!
「なつかしい」ではなく、もっとはっきりある瞬間に帰れるスイッチ。

実際に機械を発明する必要なんてないのだな
と最近思うのです。

こんな風に思うことは過去の思い出ばかり振り返っている頃にはありませんでした。
後悔ばかりで、「あの時に帰れたら」と思ってばかりいた時には。

未来だけを見て毎日を一所懸命過ごしている時、その谷間に思いがけず時間旅行は訪れます。そんな時、なつかしんでいるのではなく、本当にそこにいる私を感じるのです。

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【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
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