26 ダイエット

自分に自信が持てないと色々つけて自分を守ってしまいますよね。
捨ててもよいものと残すべきものを見極める力が必要です。

ダイエット書道!なんてあったら生徒さんが集まるんじゃないですか?」

なんて、おしゃべりの中で言われたことがありました。

おっしゃった方は冗談のつもりでも、実際真剣に条幅作品を書き始めれば冗談ではないのがわかります。

半切のサイズまでなら小学校の頃から体験していましたが、大学時代にいよいよ錬成会なるものに参加をしました。展覧会に出品する書道会では年に何回か実施される合宿のようなものです。その時に師匠に言われたのが、

「他の人のお尻の動きを見なさい。」でした。

一般に書の作品は「正座をして背筋をのばして息を止めて書く。」とイメージされる方が多いのですが、写経か何かのイメージでしょうか。

「作品」を作るには「線の質」がよくならないと駄目なのです。
それには紙に筆が触れていないところも含めた筆の動きがとても大事になってきます。
ですから、仮名の字を書くだけでも使っているのは指ではなくて、腕であり、腰であり結局全身なのです。
大字を書くなら尚のこと。
全身を使って書かなくては動きが足りませんから、スクワットをしながら歩いているようなものです。
しかもリズムも作品に表れますからダンスととても近いものを感じます。

慣れるまではきついし、字の形にとらわれるとついつい小手先にばかり注意が行くので、何度

「お尻が下がってる!」

と檄を飛ばされたかわかりません。
そして、わずか3日の錬成会が終わった時には、生まれて初めてお尻の下が筋肉痛になっていました。

この話をするとなかなか信じてもらえないのですが、大字を主に書く書道家さんたちはスクワットを日課にしている人もいます。
最近はドラマや映画でも高校生の書道部がスクワットをしているシーンがあったりしますからご覧になっている方もあるかもしれませんが、本当のことなのです。

結局冒頭の案は私の容姿に説得力がないのでボツになっていますが・・・。

書の作品そのものを鑑賞していても、作品そのものがダイエットしなくてはいけないなあ、と痛感してしまいます。
巨匠の作品を見ていると、一人の作家でも色々な時代があるのがわかりますが、共通する流れも感じます。

若い時には色々やってみて、付け足すことや大きな冒険をしてとてもエネルギッシュなのに、そのピークを超えると今度はどんどんシンプルになっていくということです。

線の力を味方にして一本の線が多くを語るというか。

造形がどんどん洗練されて行き、余白に対して黒の面積が減って行くのに弱くない。
無に近いほど無限のパワーがあふれてくるかのようです。

あばれるよりも強い何かがどこかから伝わってくるのは何故でしょう。

これは書だけではなく絵画を見ていても感じることですが、誰にでも簡単にかけそうな単純な作品がずっと心に残っていることが多くあります。

減らすというのは簡単なことではありません。
ファッションでも、自分を知り、怖がらずに何でも試してみなくては始まりません。
今持っているものだけで引き算ばっかり考えていてはやる気も続きませんもの。
まずは栄養、栄養!やっぱりダイエット講座はまだ無理のようです。

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