29 異なもの

メキシコシティでの個展の開催中にギャラリー近くの公園で揮毫パフォーマンスを頼まれた時のこと。

屋外ということで温度はともかく雨について事前に主催者に問い合わせたところ

「1月はここでは雨は降らないよ。心配ない。」

とのことでした。neverという強い表現できっぱり言われたこともあり、彼の言葉を信じることにしました。げんを担いで今回の旅は折りたたみ傘をスーツケースに入れるのもやめました。

果たしてパフォーマンス当日は素晴らしく晴れ上がった青空のもと、風を感じながら気持ちよく作品を書くことができました。
メキシコシティに着いて1週間目にことでしたが、それまで一日も雨の気配なく、ああメキシコシティの1月は本当に雨が降らないのだな、と思っていました。

ところが。

夕方、パフォーマンスの片付けも終わって部屋にいると、みるみるあたりが暗くなり、激しい雨が降り始めました。風も強くなって雷も鳴り、嵐と呼ぶにふさわしい晩になりました。

ああ半日遅れてくれてよかったなあ、という気持ちでいっぱいになり、傘を持ってきたりしていたら降っていたかもしれないなあと、げんを担いだのがよかった、なんてのんきに思っていたのです。

その後メキシコシティには1カ月ほど滞在しました。

そしてその間に何度傘をもってくればよかったと思ったかしれません。
買い物の帰りに突然降られてウールのストールを頭からかぶってしのいだり、広いチャペルテペック公園の中で降られて木の下で雨宿りをしたり。

そして人に会うたびに、「メキシコシティでは1月は雨が降らないと聞いたけど」と話すようになりました。

すると、大抵「うそうそ。この時期は毎年こうなのよ。
天気が読めないからloco(英語でcrazy)って言われてるわ」と言われてしまいました。

でも、そうすると最初に教えてくれたneverは嘘だったの?
あんなに自信を持って言われたのに。私を安心させるためだったのかな。嘘とは思いたくないな、という気持ちも強くなります。

そしてさらに何日かしてようやくわかりました。

女性に話すと「この時期はいつもこう。」と言われるのに

男性に話すと「降らないよ。今年は変だなあ」と言われていたのです。例外なく。

男の人と女の人がこんなにも物の捉え方が違うということにいまさらながら驚かされたのでした。

この違いはメキシコだけでしょうか。
日本でも何かおもしろい事例がないかな、とちょっと興味が湧いています。

本当にエキゾチックな空間の中、ホッと自分のままでいられる国メキシコ。
旅の計画をされている方には是非おすすめです。
でも、メキシコシティに行かれる際はくれぐれも傘をお忘れなく。banner-kokoro

★今回の書作は古代文字の「女」:座る女性の姿

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