Kinkoちゃん随筆

書に遊ぶKinkoちゃんの気ままな日常 ・・・現代アートから海外情報、最近なぜか少年隊まで⁈なブログ

スペイン語

【独学でスペイン語! 】多読44 今度こそ600万語達成!

スペイン語多読600万語ついに達成!!!!

el si'El si de las ninas'

Leandro Fernandez de Moratinによる戯曲。初演はマドリッドで1806年1月。大ヒットしたお芝居だそう。59歳の紳士と婚約させられてしまった16歳の少女フランシスカ。でも彼女には同世代の恋人がいて。。。
スペインの古典文学。
去年読んだチリの'Bluebells' の中で、だれでもが知っている体で引用されていたので気になって読んでみました。
夏目漱石や芥川龍之介が読み継がれているように、スペイン語圏の子供たちが代々読んでいる作品のようです。
装丁も子供向けで字が大きくて読みやすい。我々スペイン語学習者にもぴったり。

・Manolito Gafotas 5巻 'Manolito on the road'
短編集から脱皮?
全3話のみの異色作。でも一番読みやすいです。子供たちのごたごた話ではなく家族内の話中心。トラック運転手であるパパさんの仕事に同行するManolito。スペイン語学習の大人にはばっちい下ネタが多すぎる3巻4巻は飛ばしてこちらをおすすめ。
ジャパンウィークで着物quimonoを買う話なんかも出てくる嬉しい巻。

そして、いよいよ600万語達成はアガサ・レーズン!

・Agatha Raisin y la turista impertinente (シリーズ第6巻)
 ジェームズを追ってキプロス島へ。素敵なビーチにエキゾチックな建造物に・・・
 ロマンチックな舞台はそろっているのに、アガサの気持ちは沈んだまま。
 共感しちゃってつらくなっちゃいましたが、やっぱり最後まで読むのを止められない!

・Agatha Raisin y el manantial de la muerte(シリーズ第7巻)
 2月に出たばかりの新刊!
 Cotswoldsに戻ってきました。私までホッとしちゃうのはなぜでしょう?
 前巻に引き続きモテモテのアガサ。
 エステに通ってクリーム塗って、年下とのアバンチュールは大変!
 でも、ジェームズとの今後は???

初めてアガサ・レーズンに触れてから1年ちょっと。

最初は本当に大変だったなあ。
多読の目標をかかげて根性で読み切っていました。

今でも辞書は要ります。
でも辞書を引く回数は格段に減りました。
今は根性不要。

これは本を読む多読のおかげだけではないですが・・・。

2年前はまだ、スペイン語多読200万語を超えたばかり。大人向けの本に挑戦し始めたところでした。
同じ頃、まだパンデミック中ながら人と会う機会を増やしましたが、とても会話が盛り上がるどころではなく、「もの静かな日本人」のまま日が過ぎました。
指示や連絡事項を聞き取るだけでもへとへと。

アガサ・レーズンを読み始めた1年前くらいの頃もまだまだ。。。

でも、その後、ただその場にいるだけではなく、個々に話さなければいけない場面がダーッと訪れました。
合唱団の業務連絡およびメンバーのグループチャットで怒涛のように流れてくるスペイン語に目を通さなくてはならなくなりました。
さらには、仕事面でもスペイン語でのやり取りの場ができました。
そういう文書の語数を足したら多読としては何万語上乗せになるかな?

返事をしなくてはいけないこともあるので、DEEP L翻訳を駆使していますが、少しずつ翻訳機を介さずに読んだり、自力で作文することが増えてきました。

しゃべらなくてはいけない時は、相変わらず時制も人称もブロークンなままですが、少しは複雑なことも説明できるようになってきました。

資格が目的ではなくOJT(On the job training)の状態なので、理解するにも伝えるにもとにかく必要なのは語彙力!
これからも多読で力をつけていくのが私には必要な道かなと思っています。

アガサ・レーズン何巻目になったら辞書を持たずに電車で読めるかな〜。


【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語! 】多読43 600万語目前!「灰色の服のおじさん」など児童書の名作と「ハドリアヌス帝の回想」

今年前半には「夏までがんばればスペイン語多読100万語達成から2年で600万語まで行けるかな?」なんてちょっと思ったりもしましたが、さすがに夏からは個展に向けてのラストスパートが最優先。
読書からすっかり遠ざかってしまいました。
5月にチリの本を紹介した以来になってしまったので、その後読んだ本を紹介して今年の【独学でスペイン語】多読シリーズを終わりたいと思います。
振り返ると名作ばかり。

まず、引き続き多読を助けてくれたシリーズものは・・・
Manolito Gafotas  2巻3巻4巻 ちょっと子供的下ネタ多めで嫌な人は嫌かも。。。

アガサ・レーズンシリーズ 第5巻 いよいよアガサとジェームズが結婚?!
ところがそうは問屋が卸さない。
できれば予備知識なく「ええええ?」って驚きながら楽しんでほしいです。
ますます今後が楽しみ。

そして新しく出会った世界がこちら。

escarlatina'Escarlatina,la cocinera cadaver' Ledicia Costa(6〜11歳)

これがLedicia Costaを世に出した本と知り、注文してみました。
いつもの本屋さんに注文すると
「子供向けじゃん!(今さら???)」

でも後日、入荷したのを受け取って財布を出すと
「プレゼント!」
だって💗

「なんで?」と聞くと
「まず。先週になっちゃったけど、ぼく誕生日だったんだ。
スペインでは誕生日の人がみんなにプレゼントするの。
それに。
スペイン語を勉強するために本を買っているっていう人は他にいないから
と、また応援されてしまいました。
ますます頑張らなくっちゃ〜!

かたことでやっとこさっとこ注文していた頃から、今までの私のスペイン語の力の変化をあまさず見てきた唯一の証人がこの本屋さん。もっと上達して見せるぞお。

本の主人公は10歳の誕生日を前にした料理好きの少年Roman。
今年のプレゼントにはお料理教室参加を熱望しています。
しかし、誕生日当日玄関に届いたのは、受講券ではなく巨大なプラモデルでした。
死んだ料理人のパーツが入ってる。
おそるおそる組み立ててみると。。。

究極の選択。難題。
怖いもの見たさ。冒険。
子供たちを惹きつける要素には事欠きません。

各章の最初には子どもたちにも作れる簡単なお料理のレシピが紹介されていて、読み終わった後もレシピ本として台所に保管しても。

但し、本文に出てくる料理の大半はゲテモノ料理。こんなものを食べる世界ならあの世には行きたくないと、長生きを啓発する斬新な形の教育にもなったりして?

悪への厳しい姿勢と、全体を貫く優しさといったLedicia Costaの魅力がぎっしり詰まっています。
この時期の彼女の作品は購入の際、gallegoガリシア語版かスペイン標準語castillanoか確認して下さい。

El Hombrecito_Kinkoちゃん随筆独学でスペイン語多読'El hombrecito vestido de gris'

昔むかしあるところに・・・
という短い物語が8編。
全体のトーンとしてはやさしいファンタジー。
でも、いわゆる昔話の貧しさや理不尽とは違った形の人々の苦しみ、権力や制度に支配されて閉じ込められた姿が透けて見えるところがあります。

この本は初版が1978年。
スペインは世界大戦には参戦していないものの、敗戦国日本が高度経済成長期を終えた時期ですらなお独裁政権が続いていました。フランコの死が1975年。
それを思えば、この作品が生まれた理由がわかる気がします。

苦しみの中にあると人は希望を探すんだなあ。
その強い光が何年たっても色あせずに人々の心に火をともし続けている良書。

じっくりゆったりひたってしまいました。
表紙も装丁も大好き。
スペインにこんな素敵な作品があったんだ〜!

「灰色の服のおじさん」というタイトルで邦訳も出ているそうです。
もっと知られてほしい1冊。

スペイン語初級のテキストとしても推薦します。点過去、線過去の段階でどうぞ。

memorias de adriano Kinkoちゃん随筆独学でスペイン語多読'Memorias de Adriano'

こちらは工房で一緒のMargaritaさんからの強い推薦があった本。
常にやわらかい口調でほっとさせてくれる美しいおばあちゃまですが、作品は不気味なシュールレアリズムだったりします。素晴らしい画家さん。

この本も何も知らない状態で手にしました。
第一印象はAdrianoって誰???

スペイン語だと知っている地名や人名すらも認識し難いという問題。

邦訳本のタイトルが「ハドリアヌス帝の回想」である通り、ローマ帝国の「五賢帝」の三番目、ハドリアヌスでした。
60歳に近づき死を目の前にしたハドリアヌスが17歳のマルクス・アウレリウス(五賢帝五番目)にメッセージを送っているという内容です。

名前を聞いた記憶があってもうやむやなので世界史の本をおさらいしたりしてみましたが
。。。映画「テルマエ・ロマエ」で阿部寛にお風呂を作らせていた市村正親がハドリアヌス帝だったのね。

巻末の著者の覚書きによると、
執筆にあたってのルールとして、史実に手は加えていないとのこと。
人物像は著者の創作。
阿部寛演じるルシウスやベルばらのオスカルみたいな架空の人物は出てきません。

2000年前の話ですが、語り口で古代を演出するということがないので、現代人の独り語りを聞いているような感覚で読めます。「現代人が書いたんだから当たり前じゃん」と思うなかれ。人間の本質なんて2000年くらいじゃそんなに変わってないんだよ。
古い時代を扱った作品を読むメリットってつくづくこの感覚を忘れないためだなと思います。

原作はフランスのマグリット・ユルスナール(1951年)。フリオ・コルタサルによるスペイン語翻訳も名訳の誉れが高いようです。
でも今の私では四苦八苦しながら読み切るのがやっと。
いつか「さすがコルタサル!」とわかる日が来るようにスペイン語多読がんばります。

biblioteca vacio Kinkoちゃん随筆'La biblioteca de los libros vacios'(12歳〜)

アマゾンで買い物しようとしたらおすすめででてきた本。
表紙の雰囲気が気に入って思わずそのまま注文してしまいました。
本当はいつもの本屋さんでなるべく買ってあげたいんだけど。。。

前出の'Memorias de Adriano'が大変だったのもありますが、ひたすらほっとする読書でした。

閉鎖されていた図書館から文字があふれてきた。。。
だれにも読んでもらえない本からは文字がみんな落っこちてどのページも真っ白。
国の大臣がやってきて検証し非難されたが大人たちはどうしたらいいかわからない。。。
さあ、長い間本に見向きもしなかったこの街はどうなる?

中学生向けともなると子供向けと言っても幼稚な内容ではないし、過激な表現や内容はないのでいろんな意味でストレスなく気楽にスペイン語学習を続けるにはこの辺りはねらいめかも。のんびり読んでも3日で終わる分量っていうのも達成感がすぐ味わえて精神的にいいです。

作者のJordi Sierra i Fabra は1947年バルセロナ生まれの現役作家で、教科書に採用される作品も書いている現代の超有名かつ多作な作家だそう。
出会えてよかった!

友人たちはおろか、本屋さんですらが「スペインにはなかなかいい作家がいない」って言っちゃうスペインですが、なかなかどうして、少なくとも児童書にはいるではないですか!
Ledicia CostaもJordi Sierra i Fabraも大人向けも書いているし、スペイン語学習者には初級から上級までおすすめできると思います。
今後も新作が出るっていうのもありがたいですね!


注)辞書を引いて「精読でなるべくたくさん読む」多読に挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語! 】多読42 チリ文学5冊 マヌエル・ロハスからニューフェイス

合唱団で一緒のニコルが数年ぶりにチリに帰省するというのでミッションを。
「スペインで買えそうにないチリの小説を買ってきて♪」
本人は読書しないので「友達に相談する」と言って本当に4冊買ってきてくれました♡

Manuel-Rojas-Punta-de-rieles Kinkoちゃん随筆スペイン語多読’Punta de rieles' Manuel Rojas(1960年)

本にある紹介によると、マヌエル・ロハス(1896年〜1973年)はチリ文学の古典。それまでのチリになかった文学テクニックを取り入れた。
国内外で知られている代表作は'Hijo de ladron'(1951年)。邦訳「泥棒の息子」(1989年)

でもこちらの'Punta de rieles'は日本はおろかスペインのアマゾンでもみつかりません。ニコルでかした!ありがとう♡

梅毒の注射の話に始まって、妻殺し、売春宿、コカイン・・・・・・
と、少年少女のクラスレッスンには向かない話題が続くものの、読みながら中学高校の国語の時間を思い出しました。。。
実際にチリでは教科書の人という扱いのよう。

殺人を犯してしまったダメな人間としての労働者階級に
あんたなら信用できるからと今後の身の振り方を相談されたエリート階層。

一見上下、善悪がはっきりしているかに見える二人の人生をたどると・・・。

内容は濃かったですが、文章は簡潔だし4万語強の短編です。
辞書に出ていない南米特有の単語が今まで読んだ南米作品の中で一番多いですが何とかなります。
チリの雰囲気を感じるにはむしろいいのではないでしょうか。

でもチリがどうこうというより人として考えさせられるいい小説だと思います。
上向きの線と下向きの線が交わった今。それがpunta de rieles。でも上った線がまた下を向くかもしれないし、下向きの線もまた上に向く日が来るのかもしれない。

巻末の誕生秘話にもびっくり。
1927年のある日。たまたま「今妻を殺してきた」という男の相談を目撃した人の話を聞きメモを取ります。作品が動き出す衝撃のシーンが実話だったなんて!
それから何年もたってから出会った男。それがもう一人のモデル。
社会的地位も性格も人生の意味も教育も興味も何もかも違う二人。両極端なのにそれぞれ罪を感じ苦しんでいる。
このモチーフを自分の中で消化する人生経験を得、且つそれを形にする表現テクニックがひらめいて世に出せたのがきっかけのシーンから30年後ということです。

ちなみに松本清張の「砂の器」が1961年刊。そんな時代に生まれた作品。

coronacion Kinkoちゃん随筆独学でスペイン語多読'Coronacion' Jose Donoso(1957年)

タイトルのCoronacionというのは戴冠式ですが、舞台は王室ではなく上流階級のお屋敷。
屋敷の主は余命いくばくもない老婆。
そこに身の周りの世話をするために田舎から連れて来られた17歳の娘。
彼女はすぐに同世代のちょいワルくんと恋に落ちます。
いつ何が起きてもおかしくない老婆を置いて夜な夜な外に出てしまう。

これだけでもちょっとドキっとしますが、もちろんそれだけではありません。

老いによって別人になってしまった祖母。
あくせくする必要のない環境に生まれ、穏やかに生きてきた孫が50代にして初めて知る大きな感情の波。
貧しさや無知から道を踏み外してしまった若者たち。
さまざまな要素が絡んでぐいぐい読まされてしまいます。

この'Coronacion'はドノソ初の長編小説で、スペイン語圏で大ヒットし2000年には映画化もされたそう。
読みながらいかにも映画を見ているみたいな感覚だったので納得です。
なのになぜか日本語訳が出版されていません。
南米作家の中でもドノソは邦訳されている作品が群を抜いて多いのに。
まともな小説過ぎるからでしょうか?
南米作品はわけわかんないとんでも作品じゃないと日本では出版されないの?

これもチリ人直々のおすすめのおかげで読めました。
しかも原書をネット検索してもこの装丁は全く出てきません。
Kinkoちゃん随筆が初公開♪

Epifania Hernan Kinkoちゃん随筆スペイン語多読'Epifania en el desierto' Hernan Rivera Letelier(2020年)

こちらのHernan Rivera Letelierは現在チリで最も成功している作家の一人だそう。
学のない労働者が独学で初挑戦した小説で賞を取ったことで注目を集めた。
そのデビュー作'La reina Isabel cantaba rancheras'の誕生前後を振り返っているのがこちらの作品です。

過酷な労働の合間に詩を書き始め、小説を知り、自力で研究して自ら執筆するまでになったことは大変なことだったと思うのですが、心情や詳しい裏話というよりは、出来事がサラッと並べられているだけなので、トントン拍子に賞を獲ってデビューしてしまった印象の方が強く、これをきっかけにそのデビュー作を読んでみようという興味があまり湧きませんでした。Hernanのファンにとってはおさらいに過ぎないのではないかという情報量。なぜ30年たった今、この120ページ足らずのエッセイが出されたのか不思議な感じでした。
とはいえ、チリのドキュメンタリーでもあり、教材としてはちょうどよかったです。

bluebells Kinkoちゃん随筆スペイン語多読'Bluebells' Francisca Solar(2023年)

出版されたばかりの作品。作者は1983年生まれ。

舞台は1834年のチリ。Bluebells というお屋敷での物語です。
イギリスで春の訪れを知らせる花の名前を冠しているのは、主がイギリス人だから。加えて、チリでは春にあたる10月の出来事が描かれています。
ブルーベルズの花言葉は「謙遜と変わらぬ心」

でも、チリとイギリスって?????

答はダーウイン。「種の起源」のダーウィン。
ダーウインはピンポイントでガラパゴスに行って進化論がひらめいたわけじゃないのよね。大学卒業したての時、軍艦ビーグル号に乗せてもらって南半球を一周。1931年にイギリスを出たビーグル号は、1934年6月にマゼラン海峡を越え、7月にチリのバルパライソ港に寄港しました。

ヒロインはそのビーグル号唯一の女性調査員Laura。時代が時代のため女性が乗船するなんて想定外。反対勢力がいても乗れたのは、ダーウインの計らいと、乗船料を自腹で払うという条件で叶ったという設定。予算が底を突いたため、出港までBluebellsの臨時家庭教師をして残りの旅費を稼ぐことに。
そこへロンドンからBluebellsの新オーナーとなるべく現れるJohn。
全く違う生き方をしてきた二人が恋に落ちるに決まってる!

でも、なかなかロマンスが始まらない。
なかなかなかなか始まらない。

描かれている景色は昭和の少女たちをときめかせた少女マンガの景色そのものなのに。
シスレーの絵のようなロングドレスのLadyたち。美しい双子の少女たち。その周りを大型犬が走り回る。。。

男女のやり取りに抑制が効いているのが今ならむしろ新鮮と捉えましょう。しかも南米文学なんだから。

南米文学に対する勝手なイメージ=暴力、過激な性描写、犯罪といったものが一切ない本が存在する!!!
それをこうして紹介できたことには意義を感じます。

後半で、ゲーテやデフォーなど様々な古典文学が紹介されている中に、日本では知られていないスペイン語圏の名作が同列で話題になっていて、また新たな扉が開いたのも収穫でした。

la oscura ramon diaz Kinkoちゃん随筆スペイン語多読’La oscura momoria de las armas’ Ramon Diaz Eterovic(2017年)
これは自分でみつけてスペインで購入。チリの推理小説。
1987年から続く探偵Herediaシリーズ。チリではテレビのシリーズにもなっており、2022年には第20巻が出ています。
スペインで入手できる紙の本は数冊しかないので、1巻から順にではなく、シリーズ最高傑作と紹介されていたこの’La oscura momoria de las armas’ を読んでみることにしました。

印象は、テンポよくうまくまとまった正統派の推理小説。
スペイン語圏にもあるじゃないの!!!

正統派推理小説とは言ってもトリックの巧妙さにうならせるタイプではありません。
このシリーズで取り上げるのは常に社会問題だそうです。
たとえば今作は独裁政権下での拷問センターの生き残りが殺害された事件の依頼が舞い込みます。背後にはさらに大スケールの悪事が。
Heredia探偵は独身の50代。本人の容姿は不明ですが彼女は美人。
競馬やお酒が好きな一方、相当な読書家です。
読書経験からの人間味やウィットに飛んだ会話が魅力。
飼い猫とも当たり前みたいにおしゃべりしているのだけれど・・・・・・捜査は記者や新聞スタンドからの情報提供をたよりに足で行います。
Kindleでならシリーズすべて読めるので、日本のスペイン語学習者にも朗報ですよ♪

注)辞書を引いて「精読でなるべくたくさん読む」多読に挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語!】多読41 国民的人気者'Manolito gafotas'

Kinkoちゃん随筆スペイン語独学 多読manolito-gafotas'Manolito gafotas' (8歳〜12歳)

児童書を100冊読んだ頃、本屋さんに「ドラマや映画になってるのを見てから原作を読んだらいいんじゃない?」と勧められた時に名前が挙がったのがこれでした。
その時は、そろそろ大人の本を読みたい気分になっていたタイミングだったので完全スルー。
すっかり忘れていたのですが、最近別の本屋さんでたまたま発見。
表紙を見た瞬間に
「あ、あの時言ってたの多分これだ!」と思い出しました。
見たこともなかったのに不思議。

Manolito gafotasはメガネがトレードマークの男の子。
1994年に発表されたスペイン版プチ・ニコラのような作品。
1999年には映画化もされ、シリーズは2012年刊の8巻まであります。
日本では小学館から3巻まで翻訳が出ているもよう。
作者のエルビラ・リンドは1962年生まれ。子供の頃に「プチ・二コラ」を読んで育ったのではないでしょうか。
短編集というスタイルもプチ・二コラと同じ。
マノリトくんのおじいちゃんの名前がNicolasっていうのはプチ・二コラへのオマージュ?

もちろん違いはたくさんあります。

二コラはどちらかというと裕福な家の子の日常で、ドタバタエピソードの合間にフランスのおしゃれな生活を垣間見るのも楽しみのひとつ。庭付きのゴージャスな一軒家に住んでいます。

一方マノリトくんはマドリッド市南部のカラバンチェルの子。
マンションがこれでもかというほど立ち並ぶ庶民的住宅エリアです。
第2話の本文に
うちの近所には何でもある。
刑務所もバスも子供も囚人もママさんたちも麻薬常習者もパン屋さんも。

と紹介されています。
カラバンチェル刑務所は1944年から1998年まで使用されていて2008年に取り壊されたそうですが、今でも、風紀があまりよくないと思われているエリア。「危ないからあの辺は行っちゃだめだよ」と注意してもらったこともあります。

ではありますが、外国人にとっては居住許可証や再入国許可証を発行する役所があるので行かざるを得ないエリアでもあります。実はその役所の建物が建っている所こそが刑務所の跡地なのだそうです。道理で妙に閑散としたとこにポツンと建っているわけだ。
初めて行った時、建物の外観を見て「刑務所みたいだな」と思ったのを思い出しました。

メトロで向かう時すでに、目的の駅が近づくにつれて車両の中が国籍不明な感じになっていくので最初の頃は確かにちょっと怖く感じました。
国籍不明な感じになるのはビザを取りに行く外国人が乗り込むからっていうのと、この辺りに外国人がたくさん住んでいるからっていうのと両方みたいです。
降りたら「ここはメキシコか?」と錯覚するような家ばかり並んでいた駅もありました。
バーなどが多くある駅からは夜遅いほど若者がたくさん乗り込んでくるという新宿とか渋谷みたいな現象も見られます。

carabanchel alta_Kinkoちゃん随筆最近では合唱の練習の関係で毎週通っている馴染みのエリアになってしまいました。
オーディションのため初めて行った日はおっかなびっくりでしたが、今は疑心暗鬼ではなくなり、普通に通っています。
早くから拓けていた地区だそうで私たちの練習場も歴史もいわれもある古い学校。
練習後に語らうバーの前にある教会もとても古くて雰囲気があります。

そんなエリアが舞台の'Manolito gafotas'。読み始めると同時に親近感が湧いてしまいました。

二コラはたまに、子供がぶった泣いたギャーーー!!!っていうだけの話がひたすら続いたり、失敗談も幼さ故。ひたすら純粋です。
マノリトくんも子供ならではの失敗をたくさんしますが、8歳になっていることもあり、一歩引いて物事を観察しているところがあります。斜に構えているっていうか。

そこがおもしろいところでもあり難しい。子供の本だからと早い段階でうかつに手を出したら大変だったと思います。
教科書的でない構文も出てきちゃう。
子供が勘違いしたまま使っているスペルや単語、子供のノリを表すスラングといった辞書に載っていない(あるはずもない)表現がたくさん出て来ます。はからずも一般的な多読のルール「知らない単語があっても辞書引かない」と同じ体験をするはめに。
でも、生活の中の細々とした習慣や単語に触れることができます。ちょっと下世話過ぎるところもありますが、コミュニティに溶け込む上では助かることがあるかも。

一般向け本格小説より字が大きめなのは目にも心にも優しいので、一気読みではなく、一般書の息抜きに並行して読んで行こうかな。

そうしている間に本屋さんでこれが平積みに。
bubble3 Kinkoちゃん随筆独学でスペイン語多読La senolita Bubbleの3巻が出ていました。

相変わらずきれいなカラーの挿絵が豪華。
ストーリーはManolito gafotasの半分もないのに13.95ユーロはかなりの割高だけど、もはやイラストも含めて趣味だからOK。Manolito gafotasは8.95ユーロです。

第3巻の舞台はイギリス。
今年2月に出版されたばかりですが、書き終わったのがちょうどエリザベス女王崩御の日だったそうなので女王健在のストーリー。
バッキンガム宮殿に招待されたSenorita Bubbleはエリザベス女王に相談をもちかけられます。

物語中盤にパンケーキレースのシーンがあり、まさかと思いつつ調べてみたら、実際に15世紀から続いている伝統行事だとか。他にもイギリスについてのいろいろが楽しい。

S.J.Bennettのエリザベス女王の事件簿シリーズより王室トリビアにわくわくするのはなぜでしょう?

偶然だと思いますが、エリザベス女王の事件簿でも、このSenorita Bubbleでも、衛兵の帽子が熊の毛皮で作られている話に触れています。調べてみたら一つの帽子を作るのに熊一頭必要とのこと。動物愛護の観点からも予算の観点からも新しくする話が出ているそうですが200年も続いたあの帽子がなくなるのはさびしいですね。フェイクファーでデザインはそのままじゃだめなんだろうか?ちなみにSeorita Bubbleがかぶっているのはフェイクだそうです。

だからといって動物愛護とかの主義主張を押し付けるのではなく、持ち前の優しさで見事に問題を解決するSenorita Bubble。

そして少しずつベールが剥がされていく彼女の過去。新たな敵も姿を表し・・・
当然最終行の一言はContinuara.......       
どうなっちゃうの〜?

注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語! 】多読40   500万語達成!! は南米女流作家作品

nuestra parte de noche Kinkoちゃん随筆スペイン語多読'Nuestra parte de noche' Mariana Enriquez(アルゼンチン)

工房で一緒のアーティストBeaちゃんが「美しい。とにかく美しい」と強く勧めてくれた本。
この表紙で美しい内容じゃなかったらどうしてくれる?!って感じですよね。

勝手に男女の壮大な愛の物語を想像して読み始めると、登場したのは大男のパパさんと6歳の息子。
ほどなくして。。。。。。え?オカルト?
あ。Nuestra parte ってそういうこと?

怖いのは嫌いなのについついページをめくってしまう。闇の儀式が始まったりして不安材料は増える一方なのになんか読んじゃう。するとだんだんRPGとか少女漫画に見えてきました。ファイナルファンタジーみたいな。画が美しいのだ。文字なんだけど。
パパさんと息子Gasperは当然超絶な美形親子です。基本主要人物はみんな美形。

描写が丁寧で特殊な場面も絵を見るように鮮明に伝わってきます。聞いたこともない植物や伝説、イグアスの滝といったアルゼンチンの景色がエキゾチック。外国人読者であるお陰で一層ファンタジーな気分を味わえているのではないでしょうか。

しかし舞台がアルゼンチンであり1981年に物語が始まることは偶然ではなく、軍事政権のもとで何万人もの人々が姿を消した失踪者の問題が闇の生贄の姿に重ねられているような?
そう思った瞬間から重く、違った怖さが加わりました。。。

息子Gasperの抱える苦悩もなまなましく伝わってくるので精神的に健康な時に読まないとつらくなり過ぎるかも。緊張感と期待感MAXの中、第3章が衝撃のエンディングを迎えます。

ところが。
結論から言えばこの作品はここで終われば傑作の一言だったかもしれない。

後半がつらかった。
長編マンガの番外編みたい。なくても成立する内容です。
それどころかドラマ「女王の教室」の番外編を見せられた時くらいの失望。
ファンタジーのまま終わろーよー。
前半のような精彩をまったく欠いたままぬるーくダラダラ続く後半は、前半に誰もが抱くであろう「謎」の答えを与えてくれるでもなく内容は暗い。

このつらさを助けてくれたのが侍ジャパン。
勝つたびにスカッとして助われました!
ヒーローってすばらしい!!!
選手たちもまさかこんなところで人助けをしているとは思わないでしょうけど。

おかげでなんとか最後までたどりつけました。
後半についてはBeaちゃんも実は正直不満だったらしく、そんなことも含めて読後感想でキャーキャー盛り上がれたのが私にとっては一番楽しかった部分かも。
前半を読むだけでも一般の小説1,2冊分の分量があるのでわりきって手を出しても損はない。多読的にはやっぱりおすすめの一冊。何せ「野生の探偵たち」とこれの2冊だけで50万語を軽く超えてしまいます。

マリアナ・エンリケスは現代ラテンアメリカ文学のホープと目されているそう。すでに邦訳も一つ出ていました。'Las cosas que perdimos en el fuego'「わたしたちが火の中で失くしたもの 」。
ホラーのプリンセスと呼ばれているそうですが、少なくとも'Nuestra parte de noche'は怖さを前面に出したい作品ではないなという印象。
なんだか「悪魔の花嫁」が読みたくなっちゃっている私です。

merkel2 Kinkoちゃん随筆独学でスペイン語多読頑張った後はリラックス。
探偵ミス・メルケルシリーズ第2巻。'El caso del jardinero enterrado'

癒される〜。
どれだけ前の2冊で緊張していたかわかります。字も大きく感じる。

前作のご縁で乳母車を引いて登場するアンヘラ。
夫Achimは男友達と旅行中。寂しいはずが・・・一目ぼれ?
素敵なロマンスグレーにときめくアンヘラ。
墓地で出会ったその彼は葬儀屋さんでした。
いまどきな葬儀のトピックはそのまま日本に重なり、落語みたいにユーモアと風刺が楽しめます。
アガサ・レーズンに負けず劣らずおもしろいけど、当たり前ながら話題がホット。

ドイツではホワイトデーにこのミス・メルケルのテレビドラマが放映されたようです。
映像になってもおもしろそう!
アンヘラは相変わらずかわゆいし、ドイツ語の翻訳家さん、早く日本に紹介しないかなあ。

こうしている間にもう先月アガサ・レーズンスペイン語版の第5巻が出ているんだ。
うわあ。読むのが追いつかな〜い。
あんなに本を探すのが大変だったのがうそのようです。

diez mujeres Kinkoちゃん随筆スペイン語独学!多読'Diez mujeres' Marcela Serrano(チリ)

再び南米文学。
この本は何も知らないまま表紙に惹かれて買いました。

マルセラ・セラーノはもともとはビジュアルアーティストだったらしいですが、38歳から小説を書き始め、1991年、40歳の時に第一作を発表。現代チリ文学を代表する作家の一人だそう。イタリアに亡命したことがあったり、3回も結婚したりと、彼女の実際の人生のほうがドラマチックかも。フェミニスト。左翼。なんてプロフィールを読むと難しいかなと心配になりますが文章は平明だし暖かいまなざしを感じました。'Diez mujeres'は2011年60歳の作品。

タイトルの通り10人の女性が登場。
目次には10人の名前が並んでいるだけ。そして1ページだけのエピローグ。
一人目は夫と娘たちとの生活をごくごく普通と自認しながらも自分は誰よりもみじめだと感じている40代のFrancisca。
二人目は映画'Sunset Boulevard'のような人生だったと振り返るもうすぐ75歳のMena。
三人目は・・・・・・。

年齢もバックグラウンドも違う9人の女性たちが一人ずつ自分の人生を語り短編集のような感じで進みます。(予想以上の多様性でした)
会ったこともなかった9人を結びつけるのは心理セラピストのNatasha。

9人は自分たちの人生を淡々と語りますが、セラピストが必要なほどトラウマや悩み事を抱えています。
それぞれの傷を他の人たちと分かち合うことが回復の助けになるのではないかと考えたNatasha。
9人が集められた日の告白を読まされているのが私たち。
私たちは11人目の参加者として立ち会うことで、同じように自分の心を軽くすることができるのかもしれません。

フィクションであってもこうして他の女性がどう生き、何を感じているのか知ることは、何かにぶつかったときに自分を支えてくれる大切な経験だと思います。
いくら大勢の知り合いとじっくり話す機会があったって、ここまでつっこんだ話はなかなか聞けないものね。ネットは言わずもがな。

何人かのセリフに「この国(チリ)では・・・」というあきらめや嘆きがあります。
日本人もよく言う言い回し。本全体を通して「同じなんだな」と感じることの方が多いです。
一見遠い別世界のできごとに見える話ですらも、だれにでも何かしら心当たりがあるような問題と向き合わせてくれる。
同時に日本の世界史や地理の教科書に載っていない世界にも目を開かせてくれるのがスペイン語圏の本のいいところ。
さり気ないのに充実度満点。
今のところLidicia Costas'Golpes de luz'と並ぶおすすめ作品。

いい作品で500万語を超えることができました♡

Kinkoちゃん随筆_スペイン語多読500万語これがスペイン語の本500万語分。
日本にある数冊の絵本以外全部あります。
後ろに立っているのがほぼ児童書で200万語くらい。
手前の300万語はちょうどこの1年で読んだ感じです。
500万語って思っていたより多い?
それとも500万語ってこんなもんか。かな?
時によって感じ方が違います。
一番手前右から3冊目の'Manolito gafotas'だけ未読。次回ご紹介しまーす!

注)辞書を引いて「精読でなるべくたくさん読む」多読に挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語! 】多読39 チリ文学ボラーニョ「野生の探偵たち」

los detectives salvajes Kinkoちゃん随筆'Los detectives salvajes'
「野生の探偵たち」

初めてのチリ文学。

まずボリュームにびっくりしてしまいました。
小学館西和中辞典と全く同じサイズ。厚みも。
これまで読んだ中で最長の'El ultimo barco'707ページを超え745ページ。
しかも1ページあたり400語以上ある。

人から薦められて何も調べずに注文しちゃったから届いてびっくり。
本屋さんの店頭で見かけたのだとしたら絶対手を出していなかったと思います。

でもですね。一番の目的は多読なのだからして・・・
久々に言いますが、このボリュームで12.95ユーロ。コスパ最強。多読の味方です。

多読 Kinkoちゃん随筆 


コスパはありがたいですが厚い本は扱いが大変。
辞書を引いてる間にページが閉じちゃったり、閉じなくても調べた単語がどこだったかわからなくなっちゃったり。
というわけで、洗濯バサミと付箋で対応しています。おすすめ!


このように装備を整えてぼちぼち読み始めました。
すると1ページめからこんな人たちが登場。
los real viscerealistas/ viscerrealistas
辞書を引いても出てこない。
モヤモヤしたので検索したらゾクゾクと出てきました。
el realismo visceralは「はらわたリアリズム」って訳されているらしい。ボラーニョと友人がやろうとしていたムーブメントで実在はしたらしく、むしろこの作品で名を残したみたいな文学の前衛運動。

前衛運動?それも文学?って思うと拒絶反応が出る人も多いと思いますが、要は「はらわたリアリズム」っていうサークルの大学生たちをめぐる青春ストーリーです。
「野生の探偵たち」というタイトルですが、いわゆる探偵ものじゃありません。
舞台はほとんどメキシコです。

時代は日本でいうとフォークソングの時代。1975年から始まります。
1975年のヒット曲は「22才の別れ」「いちご白書をもう一度」
シンガーたちの長髪にジーンズの姿が「野生の探偵たち」の若者と重なります。
ついでに言うとジーンズに下駄の中村雅俊主演ドラマ「俺たちの旅」も1975年。
中村雅俊も長髪でしたね。

全体を通しての主人公はAlturo Belano, Ulises Lima。
第1章、第3章ではサークルの後輩Juan Garcia Maderoくんの日記に登場。
2章では53人が語る話の中に二人の人生を垣間見ることになります。

つまり本人たちは現れない。

「桐島部活やめるってよ亅パターン?
「ゴドーを待ちながら」?

☆「ゴドーを待ちながら」と言えば、フランス映画の『アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台』には驚きました。実話なんですもんね。ラストが実にリアルです。「でしょうね」と思ったけど、それがむしろリアル。さすがおフランスな映画。おすすめです。

「最後まで出てこない」という点ではスペイン映画『TOCTOC』もある意味あてはまる。
これもめちゃくちゃおもしろかった!!!


第一章を終えた時の感触は
「ここまででも短めの小説1冊分のボリュームか。あれ?でも案外さらっと来ちゃった?」

とはいえここからが本番。第2章が全体の約8割。
語り手が53人もいる上、再登場する人もいてわかんなくなっちゃうといううわさ。
だからかな。目次に全部載っていました。
語る人の名前と場所と時期とページが。
目次だけで8ページ。
実際はほとんど参照しませんでしたけど。

主役の二人がフィーチャーされるのではなく、話のついでに出てくるだけなのは一貫しています。
「はらわたリアリズム亅を調べた時にちょっと口コミを見ちゃったから主役がこの二人って予めわかっちゃったけど、何の情報もなく読んでいたら「なんかこの名前はよく出てくるな」って後半でやっと思う程度で主役と思わないかもしれないです。

容疑者を割り出す刑事さんの聞き込みってこんな感じで情報を拾っていくのかなあ?地道。
ある意味そういう「体験」をする前衛アートと思えば腑に落ちる。
私はそう解釈することにしました。

1日1万語読んでも1か月かかる長さ。
なのに「早く先が読みたい!」っていう感じじゃない
なかなかにちゃんとした地道体験じゃないでしょうか。

実はほぼ1か月毎日読み続けて550ページに届いた瞬間に集中力がきれてしまいました。
もう洗濯ばさみもいらないし、作品の世界観もだいたい見えてきたというのに快適に邁進どころかぷつりと。

気分転換に「カディスの赤い星」上下巻を一気読みしちゃったりしました。
「カディスの赤い星」は手に汗握るハードボイルドだしけっこう長いのに、あっという間に読めちゃいました。日本語だと何てラクなんでしょう・・・・・・。

それでもまだ「野生の探偵たち」に戻る気になれず4冊もLedicia Costas作品に寄り道。

【独学でスペイン語!】多読37 400万語達成で「ラテンアメリカの文学をもっと読みたい」と語った矢先にスペインの作家作品を紹介することになったわけはこういうことでした。。。
宣言通りチリの作品に着手してはいたのです。

「野生の探偵たち」のスペイン語自体は難しくありません。
詩の専門用語や有名な詩人、哲学者の名前はたくさん出てきますが、残念なほど深掘りされないのでそういう難しさで頭を悩ますこともありません。
それなのに終わらないんです。

悩むこともない代わりに登場人物やできごとにあんまり興味が持てなかった。
馴染みのある土地がたくさん出てくるのに舞台をイメージして楽しむっていう内容でもなく。
私にはつくづくはまらなかった・・・

でも文学のマジックで、感覚では何か受け取っているのかもしれません。
何かの折に光景が浮かんだりするのかも。今はまだわからないけど。
今は読み終わってただほっとしています。

感性の合う人にとっては間違いなく最強の多読おすすめ本です。

注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語!】多読38 スペイン現代作家 Ledicia Costas

本屋さんの店頭で惹かれた本とネットで何度もおすすめで出てきた本の作家が同じと知って、これもご縁とまとめて読んでみました。

Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読 La senorita bubble'La senorita Bubble' (10歳〜)

ネットの画面で見るよりイラストがかわいい。
おしゃれ感があって10歳ちょいの女の子にとってはもうこの本を手にしているだけでうきうきだろうな。
魔女っ子メグちゃんを見ていた私たちのような(いいよいいよどうせ通じる人少ないよ)・・・ちょっと背伸びした感じで。

表紙だけでなく、1章に1ページ、カラーのイラストが入っています。
紙質もよく、読みやすい字の大きさ。
どうして100冊までにこのシリーズに出会わなかったのだろう。ANAYA Sopa de libros シリーズ。他の本も表紙のイラストが魅力的で期待がふくらみます。

村はずれにある山の古い洋館に怪しい女が住み始めた。子供をさらって食べてしまうという噂。
ある日9歳のノアと6歳の妹ソフィはそのLady Bubbleと道端で出会う。
おしゃれで不思議なBubbleに興味津々の二人は家までついていってしまうのだが。。。

姉妹と一緒になって泣いたり笑ったりしてしまいました。面白くかつ読み応えあり。
読んでいる最中なぜか何度も「オズの魔法使い」を連想。
話は全然違うのに不思議でした。
話は全然違っても匹敵するくらい名作なんじゃないかしら?
古典の童話のようにリアルと品があると思いました。

イディオム表現や婉曲表現もふんだんで、スペイン語教材としても学びがいっぱいです。

2巻の副題は’Aventura bajo cero’。
サンタクロースの住む村でLa senorita Bubbleが大活躍。
事件は解決したのに最後の一言はContinuara......。
3巻はいつかな?

追記)3巻は2023年2月に出ていました!'Dios salve a las reinas'

Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読 el nino de fuego nino de fuego'El nino de fuego'(9歳〜)

巻末に出版社から一言。
2022年4月2日に印刷が終わりました。
その日は児童と少年少女の文学の日。アンデルセンが生まれた記念の日です。
アンデルセンは「マッチ売りの少女亅などを書いた作家です。

この'El nino de fuego'でも重要なアイテムであるマッチ。
どんな形で「マッチ売りの少女」がオマージュされているかは読んでのお楽しみ。
お話にぴったりの挿絵も素敵でうっとりします。

La senorita Bubble同様、途中まではとてもオーソドックスな展開。
それが突如「ここでこう来る?」という驚きを与えてくれます。様々な伏線もしっかり回収。

'El nino de fuego'も児童書だというのに辞書もたくさん引いたし、構文をじっくり考えた箇所もあり、たまに「あれ?こんなに多読していても力がついていないわけ? 」なんて自問した瞬間もありましたが、終わってみれば'La senorita Bubble'2巻めとこの本を同じ日に一日で読み終えている。ちゃんとスピードアップしていました。一般向けを読んだあとのような疲労感もないです。


Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読 golpes-de-luz'Golpes de luz'

これは児童書ではなく一般向け小説。2021年刊。大人向けとしては2つ目の作品とのこと。

ガリシアの老母のもとに身を寄せることになった娘と孫息子。
世代の違う3人が交互に自分の視点で語る日常が話を紡いでいきます。
血が繋がっていても全く別人格であるという忘れがちな当たり前から来る日常の小さな悲喜劇だけでも十分に面白いと思うのに秘密あり事件あり。いつの間にか深い内容になっていて、なまじの推理小説よりも謎と向き合わせてくれます。
丁寧な心理描写に引き込まれ、じっくり熟読。
介護、転校生、いじめ、薬物、離婚、殺人・・・こう並べたらどんな小説を連想しますか?
重いですよね。暗いですよね。
でも、そういった問題としっかり向き合っているのに終始あたたかい気持ちでいられる作品です。

児童書もそうでしたが、悪い奴らはとことん悪い。
でも、子供のそばには必ず素敵な大人がいてくれる。
これって子供にとって希望であり安心ですよね。
すごく大事なこと。

たまに自分が子供の頃のドラマとかを見ると、日本でも昔の子供のドラマにはいたんですよね。いざという時たよりになる大人。

ある時期からドラマでも映画でも「大人だって悩むんだよ。大人だって失敗するんだよ」って大人がえばらないドラマが出てきて、あたかも子供に人権を与えたかのようにあっという間にそればっかりになっちゃったけど、架空のドラマであっても、架空のドラマであればこそ、分別ある大人が寄り添って解決してくれるっていうのは大事だったんじゃないかなと思っていました。

頼りがいのある大人であることと、子供を支配することは全く別のことなのに、なんかすり替えられてしまったよね、日本。

それも「海外では」という怪情報に踊らされて蔓延したわけだけど、実際の海外では大人はちゃんと大人のままです。
大人の世界と子供の世界はちゃんと区別されている。
親や先生はフレンドリー。
それは確かだけど、しっかり線が引かれていて、ダメなものはダメってピシってする権利がある。
昔の日本と同じです。
でもだからこそ子供が子供でいられるわけ。
これこそが子供の人権じゃん。

あたたかい大人たちに心を救われる10歳の孫息子セバスチャンのシーンでは一緒にホロっと来ちゃいます。
そして、そういう大人を見て育つ子は次はそんな大人になろうって思える。
目標になる大人に出会えるって素晴らしいことですよね。

大人をバカにしちゃってる子供が増えた日本で未来に希望を持てない子供がいるのは当たり前だ。

'Golpes de luz'は子供向けの本ではないので、当の大人が悩む姿も当然出てきます。
でも子供の希望を奪うものではなく、未来への準備につながるものだろうと思える。どの世代が読んでも忘れかけた「来た道」の記憶に共感したり、「行く道」の視点に触れたり、とても大事な体験になると思います。
中学生なら十分読めます。大人だけでなく子供にもおすすめ。

作中何度も意識させられるタイトルは、読み終わってから見るとなおさらに強烈。
いやあ。すごい本でした。

Ledicia Costasは1979年生まれの弁護士。
スペイン北部のガリシア地方ビゴの生まれでガリシア語で執筆しているそう。だからスペイン標準語で私が読んだ本は翻訳家が訳した翻訳です。'Golpes de luz'は標準スペイン語castillano版も同作者。

いずれの作品も、ネットの口コミは少ないですが、着々と作品が出版されていて、本屋さんはおもしろいって言うし、平積みになっていたりします。
ネットですごーく反響のある'Amanda Black'で超がっかりした経験もあるし、つくづく本屋さんで売れている本とネットで調達されている本は別の市場と感じます。
これからもいい本と出会えますように。

注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語!】多読37 400万語達成! メキシコ文学 アレオラ/イバルグエンゴイティア他

ハードボイルド感あふれた表紙が並んでいつものKinkoちゃん随筆と雰囲気が違いますね。
でも読んでみてください!
メキシコの小説5冊。

la-feria_Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読'LA FERIA' Juan Jose Arreola

200ページに満たないボリュームで楽勝かと思いきや、とりとめがないというか脈絡がない短いパラグラフの羅列に怯みました。

一文一文は簡潔。高尚な単語が並ぶでもなくスペイン語そのものは難しくない。無理に世界観を掴もうとするのをやめて音読にしたらすっと進みました。ルルフォもそうだったからこれも詩だと思えばいいのかな。

中南米のインテリさんたちの頭脳は別次元過ぎる!!!と思っていたけどアプローチを変える必要があるのかも?

文中にla feriaの話題がないわけではないですが、タイトルの'La feria'は特定のお祭りや市場を指しているのではなく、村にはたくさんの人がいて、それぞれがそれぞれの事情に生きている活気みたいなものを表している気がします。

最初は慣れませんでしたが、やっとこれは洛中洛外図屏風を見ると思えばいいんだ!と思いました。
絵巻物を読んでいくのではなく。
自分で見るパートを選べないからアレオラが見ている実況を聞かされているっていう立場です。

裏表紙には「主にエゼキエル書やイザヤ書、聖書外伝、植民地時代の印刷物、ハリスコ州の南にある架空の村の記録など、さまざまな口伝や文章の翻訳物の断片や歪んだ断片が集められています。この作品は実は子供の頃の純粋な記憶、読んだもの、見たもの、聞いたものを、次から次へとランダムに並べたものです(DeepL訳)亅とあります。20世紀前半のメキシコの風物をリアルに感じることができる一冊。
昔の話と思わなくてもいいかもしれません。メキシコシティの大都会ぶりとは対照的に、ちょっと市内から外へ出ただけで、ロバが荷物を運んだり、牛が畑を鋤いていたりという光景が今も生きているのがメキシコです。

Arreolaフアン・ホセ・アレオラは国民文学賞も受賞した20世紀メキシコの巨匠。様々なスタイルで幅広いジャンルの作品を残し、多くの作家に影響を与えたそうです。邦訳もいくつか出ています。


dos crimenes Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読'Dos Crimenes' Jorge Ibarguengoitia

お、お、お、おもしろい。
メキシコ人に「メキシコに面白い推理小説ないの?」
と聞いたら「あるよ!」
あるに決まってんだろ!という口調で教えてもらった作品。

付き合って5年目の記念日を友人たちと祝っていたMarcosとla Chamaca。まさか翌朝職場に着くや否や逃避行が始まるなんて。無実なのに!
資金調達のため二人別々に親戚のもとへ。その後の展開が意外で全然先が読めません。探偵登場のタイミングも絶妙。しかも「ここにいたんだあ!」って。
それからもページをめくる手が止まりませんでした。最後の一行まで気が抜けません。

スペイン語としても物語としてもわかりやすくて読みやすいから、スペイン語を勉強している人にはもちろん超おすすめ。でも何より純粋に面白い。

なんで日本に紹介されてないんだろう?

ホルヘ・イバルグエンゴイティアもメキシコの20世紀を代表する作家とのことですが邦訳があるのは'Maten al leon'「ライオンを殺せ」のみ。

実はスペインですら入手困難なんですけどね。
アマゾンにはあるけど古本でなんと300ユーロ超え。
というわけで薦めてくれたメキシコ人にメキシコで買って来てもらいました。


その頃通りかかったのが
TIPOS INFAMES
ショーウィンドウにも店内にも'La sombra del viento'とか'La novia gitana'なんて影も形もありません。
だから入りそびれていた本屋さん。敷居が高かったっていうか。
でもこの時は
「この中から自力で『何か』をみつけるのは無理そうだけど聞くなら一瞬だ」と思えて店内へ。

メキシコの本ありますか?
できれば推理小説で
できれば残酷じゃないやつ
シリーズなら最高

すると「あるよ」

あっちの棚こっちの棚からササッと3冊出してくれました。検索じゃなく。

かっこいい!

というわけで入手した3冊。
オーナーさんがこの中で1番好きという1冊から読むことにしました。

El-complot-mongol-Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読'El complot mongol' Rafael Bernal

この本はスペインで2013年に出た復刻版。
メキシコでの初版は1969年。
メキシコ犯罪小説はここから始まったとみなされているそうです。

中国がアメリカ大統領暗殺計画?
阻止するためにFBIとKGBに協力することになったのはメキシコの殺し屋Filiberto Garcia。

早速第2章から中国人が登場します。
ゼンジー北京みたいに訛ってる。
え?もしかしてゼンジー北京を知らない人が読んでる? 中国人の日本語をデフォルメしてるマジシャンです。三宅健くんの中国人ものまねでもいいや(もっとマニアックかな?)。とにかく

私ここ行たよ。それ面白いある。ちょとよろしか?

みたいなこと。ネイティブが読むとそんな感覚なのかなと。
muy をmuと言ったり、r がみんなl になっていたりする会話が続きます。padreが padle、guerraがguelaみたいに。きっとネイティブにはRとL の違いだけじゃなくイントネーションのクセなんかも想像させるんでしょう。

よかったー。
1年前だったら絶対アウトだった。
いいタイミングで読めました。

他にも毛沢東や蒋介石の名前も中国語読みで出てくることなど日本人にはいくつかハードルがあるかもしれませんが、文章は常に簡潔で構文に悩まされることはありません。

淡々とハードボイルドの世界が展開します。

 シャツの上から胸の拳銃に手を当てる。
 こいつが一緒じゃないと裸で歩いてる気分だぜ!

そんなGarciaが、独白中に何かとPinche pasado! Pinches muebles!とpinche pinche と挟む。全編を通してずっと言っているのである種のリズムが生まれています。うっかり真似したらいけないとわかりながらもうっかりしそうなくらい入って来ちゃう。

復刻版に当たって冒頭と終わりにメキシコの作家たちからの解説があるのですが、終わりの解説の後にちっちゃい字で
La mejor victoria es vencer sin combatir.
とあります。孫子の戦わずして勝つ。

なんのこっちゃと思ったら、その下に
'El complot mongol'を読んでくれてありがとう。気に入ってくれたなら嬉しいです。その時は他の読者にもおすすめしてね。
って書いてありました。
はい。Kinkoちゃん随筆にたどり着いてくれた皆さんに強く推薦しますよおっ!
全く無駄のない鮮やかな作品でした。


Ella entro Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読'Ella entro por la ventana del bano' Elmer Mendoza

Elmer Mendozaはnarcoliteratura麻薬文学というジャンルを代表する一人(らしい)。前述の'El complot mongol'の解説を書いています。

冒頭からテクニックが駆使された語り口で、誰が誰に話しているのか、いつのことなのか戸惑います。人称や、動詞の活用形をよく読み解いて判断しないといけません。
これも1年前ならアウトだったー!!!
無理無理絶対無理。
1年前1年前って言ってますけど、1年前どころか最近までかもです。
だって1年前の今頃はまだ10歳とか12歳向けの本を読んでいたんですから!
【独学でスペイン語!】多読22 レベルもコスパもアップ
確認してみて自分で驚いている。

さてこの本のタイトル。ピンと来ますか?
私は正直
女が?風呂場の窓から?何のこっちゃ?でした。
でも斬新な気がしたし、ちょっとおしゃれな期待をしました。

実はこれ、ビートルズ。
'She Came In Through the Bathroom Window'
私ですらジャケットを知っているアルバム'Abbey Road' の1曲です。ピンと来る人には違う世界が見えているんでしょうか。

事件現場で主人公が言う「Filiberto Garciaとお友達のRafa(作者)のための事件だな」
'El complot mongol'を先に読んであってよかった!

それを言い出しちゃうと'Pedro Paramo'のたとえも出てくる他、クイーンやシナトラやの音楽の話題やトム・クルーズやミラ・ジョボビッチなどハリウッドの例えもたくさん出てくるので、どれもこれもピンと来たほうが面白いでしょうけど。

私の場合肝心のビートルズをわかってなかったですが、ポール・マッカートニーの実際の事件や一見不思議な歌詞の意味などを調べた時間が実は一番楽しいひとときでした。

この本は2008年に生まれたEl Zurdo Mendietaシリーズの第6弾。2020年の作品です。
文体の問題だけじゃなく、辞書の出動も多めで骨が折れました。
でも100ページあたりからこのリズムがくせになってくる。
メキシコではTVドラマシリーズにもなっているらしいですが、これならきっと原作の根強いファンがいるんだろうなと思わせられました。

el Zuldoも結構pincheって言います。
お金のためにワルになろうとしたんだけど警察になっちゃったっていう変り種らしい。
こういった背景は6巻では何も説明されません。

6巻ではel Zuldo警部は同時に2つの問題を追い始めます。
シリーズ史上最悪の悪党を迎える一方、死の床についている老人から女を探すように頼まれる。トイレの窓から入って来た女。名前もわからないままの美女。
捜査の緊迫したシーンで疲れたなと思い始めると、老人が謎の美女と情を交わした22年前の甘い記憶の断片が栞のように挟まれる。
この繰り返しが絶妙。

麻薬小説ということでしたが薬は登場しません。密売人の活躍?も特に描かれず、要はアンダーグラウンドの組織対警察の戦い。「あいつらヘリコプター何機持ってんだよ?亅と警察がこぼすくらいの破格の財力が資金源をにおわすくらいです。人間が壊れていくような嫌〜な描写はありませんので、本を探す際にnarcoliteratura麻薬文学と紹介されていても、先入観を持ちすぎずに手にとってみたらいいのかなと思いました。


la muerte me da Kinkoちゃん随筆 スペイン語多読'La Muerte Me Da' Cristina Rivera Garza

連続殺人事件。
被害者に共通するのは裸の死体の男性器がなくなっていることと謎の紙片。
クリスティーナ・リベラ・ガルサと名乗る女性(作者)が一人の死体を発見したことにより、現場に残された紙に書かれているのがAlejandra Pizarnikアレハンドラ・ピサルニクの詩とわかる。

アレハンドラ・ピサルニクはアルゼンチンの女性詩人。第二次大戦中のユダヤ人という複雑な生い立ちと喘息や吃音、太りやすい体質、性的マイノリティーであることなどから多重のコンプレックスに苦しみ、36歳のとき鬱病で自殺。詩にはいつも愛と死が語られる。

女性刑事と女性記者が謎を追い始めますが、聞き込みとかのシーンが出てきません。「もっと詩について知りたいわ亅とか言っちゃって延々とアレハンドラ・ピサルニクの説明が続く。何だか新手の文学講義を読まされているような気になりました。

物語終盤は倒錯した世界になりながら犯人の顔が見えてきます。
が、最後までほぼ捜査シーンがない! 
逮捕のシーンもない。
被害者の人格は全く配慮されないまま。

読み終わってやっとわかりました。
推理小説と思うからいけないのね。
'La Feria'の国の人なんだ。あれがありならこれもありじゃん。
スタイルも面食らうし、殺人シーンはあとを引きます。謎も残る。それを踏まえた上で、変わった感覚を味わいたい方は読んでみて下さい。

ぷはああああ。疲れたあ。
邦訳の出ていない本ばかりで充実の異文化体験。
たまたまですが、古いものから最新のものへと時代を下りながらのメキシコ文学。

スペイン語多読も400万語を超えました。
根性で自分を鼓舞しないと折れそうになったことは何度もありますが、大きな山を越えた気がします。

自分がスペイン語多読を始めた時、あまりにも情報がなくて困りました。そんな中、少しでも情報をもらえたブログには大感謝。でも如何せん少ない。それで今後スペイン語多読に挑戦する人に少しでも役に立てたらと思って発信を続けてきました。

400万語を超えた今、スペイン語学習の助け合いだけでなく新たなミッションをみつけた気がします。

南米の文学をもっと読んで行きたい。

いつかメキシコ文学を、さらには南米の文学を原書で読むことはスペイン語学習を始めた当初からの夢でした。
翻訳されたマジックリアリズムの本を読むたびに、魅力を感じながらも消化不良が残ったからです。

でもそもそも日本に紹介されている南米の情報が少なすぎる。

南米文学といえばマジックリアリズム。
そういう特徴的な作品が生まれるのは確かだけどそれだけみたいに紹介されたらそれも偏っています。

例えばここに紹介したメキシコの5冊だけでも色々イメージが変わります。

作風もマジックリアリズムじゃない。

ハードボイルドで麻薬やドンパチが出てきてもアメリカ映画が描く悪いだけのメキシコじゃありません。
ユーモアがあってもアメリカ映画が描く間抜けな道化のメキシコ人じゃありません。
戦勝国のフィルターを通して世界を見ている限り、日本の戦後は終わっていないとも言えます。

そんなこと言われてもどこから手をつけたらいいかわからないですよね。

これらの本を見ても、今までの私が好む表紙じゃありません。
目の前にあったって、こうして勧めてくれる人がいなかったら手に取らなかったでしょう。
そう思うと橋渡しは重要なのじゃないかと思うのです。

上の2冊のように南米にいないと入手困難なものもありますが、それでもスペインでなら日本と南米の距離より近い。
コツコツ増やして行けたらと思います。

注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語!】多読36 初心に帰る絵本

2023年 皆様にとって幸せな一年でありますように
こちらは今日から工房で初仕事!
今年は頑張りますよお!

libros buenos aires初めて買ったスペイン語の本は絵本でした。いずれも2012年に購入。
引っ越し荷物から出て来て久しぶりに開いた2冊。

本当に最初の最初にメキシコで買った1冊がまだ見当たらないのですが、初心に帰る意味で新年最初に紹介するのはこの本たちにしました。

写真右:'Pequeno rey ?quien eres tu?'

メキシコで買って大喜びしていたけど実はスペインで作られた本のよう。
当時はそんなことを確認する余裕すらもなかったのだなあ。
少年が眠りと同時に自分の本の中に入っていって壮大な旅をする。
これじゃまるでエンデですが「はてしない物語」の重厚さとは真逆でゆったりしたひとときをくれる一冊。
表紙から漂ってくる空気そのもの。
行った先々で
Quien eres tu? あなたはだあれ?
というやりとりが繰り返されます。
子供心にアイデンティティという概念が芽生える云々なんて真面目に考えだしたら深いけど、当時は
「あ、このスペイン語わかる!」
という感動が大きかったです。その記念とイラストの魅力で買ったおみやげでした。

写真左:'El bien y el mal'

アルゼンチンのブエノスアイレスで購入。
さすがアルゼンチン。子供のころからこんな現代アートな感覚に触れるのか。
なんて思いながら買いました。でもこれも実は翻訳もの。フランスの作品なのに今頃気づきました。
買って帰った後すぐ読もうとしたら文字は少ないのに辞書を引き始めてすぐあきらめちゃったっけ。何度かそれを繰り返しました。
流石に今は辞書無しで読めます。
逐一辞書を引いていた自分を愛おしく思い出しました。同時にわからなかったのはスペイン語力の問題ではなかったことも判明。

よい とは  悪い とは

深すぎる哲学です。

注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/

【独学でスペイン語!】多読35 女性探偵大活躍! アガサ・レーズン/エリザベス女王/メルケル元総理 コージーミステリー3シリーズ

硬派な小説のあとはリラックス。
コージーミステリーを発見。

コージーミステリーっていう言葉は最近知ったのですが、その定義を知って思い出されたのはミセスポリファックスシリーズ。
20世紀の終わりに「おばちゃまは飛び入りスパイ」を読んだ時には
画期的!
と、あっという間に全巻そろえて英語の原書まで読みました。

推理+シリーズもの=多読の味方
推理でありながらどぎつくなく楽しく読めるシリーズがあれば最高です。
おばちゃまみたいなのをずっと探していたのだよなあ。

Kinkoちゃん随筆スペイン語多読agatha raisin'Agatha Raisin y la quiche letal'
「アガサ・レーズンの困った料理」

子供向けのようなやさしい色合いで本屋さんの一般向けの本の棚では逆に目立っていました。
やわらかいイラストの表紙。でも少し不穏。

主人公の名前アガサはアガサ・クリスティーへのオマージュ(のはず)。イギリスの作品です。期待が膨らむ〜。

ところが。
楽しくサクサク進む読書じゃなーい

1)知らない単語が多い! 
2)今までで一番構文に悩む。挿入が多くて文章の骨格がわからなくなる長文がいっぱい。
  元の英語がそうなのかな?
3)主人公が言ったり思ったりする皮肉や逆説的なできごとが多い。
  ユーモアって外国人学習者には大きな壁なのだ!
  意味を予測できないんだもの。できたら逆説じゃないからね。
  正しく理解するためにじっくりの精読を迫られる。

ちっともCozyじゃないじゃん!

そんな自分に別の自分が言い聞かせる。
コージーミステリーっていうのはあくまでも犯罪や設定がハードボイルドじゃないってだけ。
文章も内容も大人向けでしょうが。


それでも集中できなくてCotswoldsの写真を検索しだしちゃいました。
結果、寄り道大正解。
主人公の理想郷Cotswolds。
実在するとは思えないほどかわいらしい田舎町です。ホテルや観光地も実名が出てくるのでいちいち調べてモチベーションキープ。
映画やオペラの登場人物になぞらえてのジョークも多く、そのたび元作品のストーリーを確認したりして世界が膨らみます。

知らない単語の多さに嘆くとか
構文が難しくて嘆くとか
多読界のルールにのっとれば
知らない単語=無視
難しい=レベルにあった本を選べ

といわれちゃうんですが・・・

最近の知らない単語については人を形容する言葉であることが多いんです。
あとは鳥や植物の名前。病名。
無視しても話は進むけど、こういうのって作者がこだわってるとこなんじゃないかなあと思うのですよね。人物のキャラによって同じ言葉でもニュアンスが変わるし、鳥や植物は五感で情景を想像させてくれるし・・・。
構文も多分、ネイティブの立場からすると、凝った演出っていうことだし、
ユーモアについてはそれこそ醍醐味のはず。

そう考えると多読と割り切ってバッサリ捨てられません。
多読の単語数アップよりなにより作品を楽しみたいもの!

そして、バッサリ切らずによかった!!
登場人物や出来事をコミカルなアニメを見ている感覚で鮮明にイメージできました。

ミステリーではありますが、謎解きはきっかけ。
クロウタドリやサクラソウといったディテールにいちいち足を止めてはメルヘンな村の景色を想像しながら、村のクセモノたちと泣いたり笑ったりするアガサの心のうちを共感しながら読むのがこの作品の楽しみ方だと思います。

50歳を超えたばかりで都会での仕事をたたみ、田舎での悠々自適生活を始めたはずのアガサ。
大人のはずなのに小さなことに揺れまくって
大人らしくない失敗をして
時に少女にようにピュアな喜びを感じるかと思えば
社会の裏を知っているからこその底意地の悪さが顔を見せる。
自分の体の変化に戸惑いながら、口紅という鎧をつけて明るく出陣。気持ちがわかり過ぎる。
気になって計算してみたら
作者のM.C.ビートン自身、この作品を書きはじめたた時アガサと同世代だったんです。
自虐も含めて等身大のリアルだったんだ。
妙齢の女子への大きなエール。自分だけじゃないんだってほっとします。

第一巻出版は1992年。
まだスマホどころかカメラもデジタルじゃない時代。作者より若輩ながらこの時代を肌で知っているのも入り込める理由?アナログでゆったりしている時代の謎解きは心地いいです。

第一巻の裏表紙にある謳い文句は
「アガサ・クリスティー級の作家が書いたミス・マープル級の探偵亅
あの時代の作品にはありえないちょっと○○な単語が顔を出すのが玉に瑕?それとも現代のよさ⁇
ともかく巻を重ねるごとにじわじわはまる感覚はミス・マープル以上です。4巻まで一気に読みました。
スペイン語訳のシリーズは2021年にやっと始まったばかりで現在はまだ4巻まで。
原作は32巻もあるらしい。何巻まで翻訳されるのかなあ。

Kinkoちゃん随筆スペイン語多読el nudo windsor'EL NUDO WINDSOR' 
「エリザベス女王の事件簿 ウィンザー城の殺人」


コージーミステリーの女王M.C.ビートンの後は探偵が女王。

ウインザー城に泊まったロシア人ピアニストが怪死。
前の晩に彼とタンゴを踊ったばかりのエリザベス女王が解決に乗り出す
。。。期待が膨らむオープニング!

でもイギリス版水戸黄門じゃないんです。

エリザベス女王は淡々と公務をこなし密偵や警察の報告を受けるのみ。

日本の首相として安倍さんの名前も登場します。後で読んだら時代を感じて懐かしいのかな。
でも正直言うと再読はしないだろうと思います。(後日、本屋さんに「この本にダメ出ししたのは君が初めてだ!亅と驚かれました)

2巻は'Un caso de tres perros'(邦訳はまだ)

巻頭に、この本はフィリップ王配が99歳で亡くなった2021年4月より前に書かれたとの断り書き。イギリスで2021年に出版され、スペイン語の翻訳が2022年に出たばかり。なのに当のエリザベス女王まで逝去。ちょっと作者がかわいそうになりました。シリーズ続ける構想だったのじゃないかしら。

作者は王室大好きなんだと思います。
推理小説としては色んな意味で弱く、フィクションとしても連日報道される実際の王室スキャンダルの方がよっぽど華々しい。でも全体を通して女王がどんなに思慮深くチャーミングかを描こうとしているので追悼と思えば王室ファンにはおすすめ?

追記)イギリス王室ファンならこちらもおすすめ→'Dios salve a las reinas'

MISS-MERKEL'Miss Merkel. El caso de la canciller jubilada'

こちらはドイツ初の女性首相。16年も采配をふるって昨年末に引退したメルケル元首相が探偵デビュー。もちろんドイツの作品です。

コロナ禍での散歩のお供は夫アチム(ヨアヒム)とボディーガードとプーチン。
プーチンというのは本の表紙のイラストにもなっている犬のパグ。
犬嫌いを克服しようとしているアンヘラ(アンゲラ・メルケル)。
このパロディだけでもうフィクションの世界に引き込まれます。

メルケル元首相が聡明かつかわいい。
現存の政治家が愛されキャラで出てくるって日本ではないことですよねえ〜。

クセのある被害者と芝居がかった舞台設定。
ダイイングメッセージ。
キャラの立った探偵たち。
赤川次郎並の読みやすさで軽やかに定石通りの推理小説が楽しめます。

これこそは文字通りCOZYなミステリー。
Miss Merkel夫婦の心温まるやりとりも素敵。
今後プーチンが三毛猫ホームズ並みに活躍するのかどうか・・・
スペイン語訳は続編が10月に出たもよう。楽しみです♪

これなら邦訳も出るかも。

スペイン語多読通算150冊。
スペイン語多読400万語達成も目前です。

あ。日付が変わりました。Feliz Navidad!!!


注)「多読なのに辞書?」って思われるかもしれませんが「精読でなるべくたくさん読む」っていうのに挑戦中です。スペイン語は独学なのでKinko流多読です。くわしくは↓
【独学でスペイン語!】番外編 落ちこぼれを1年で大学に!伝説の教師
(残念ながらこのブログではスペイン語特有のエニェとかアクセントとかが正しく表示できません。悪しからずご了承ください)

【独学でスペイン語!】多読18 100冊達成!!!100万語

☆スペイン語多読で読んだ本についてはほぼ全てご紹介しています。カテゴリー「スペイン語」またはサイト内検索、タグなどご活用ください♪

【Kinkoちゃん随筆】 書家・美術家 金子祥代 https://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/
随筆内キーワード検索
Message
Archives