4年前の今頃は初めてのスペイン行き、初めてのアーティストインレジデンス参加を前に、わくわくどきどきしながらビザや作品の準備に追われていたのでした。

その、初めての経験を与えてくれたレジデンスから残念な報せが届きました。
世界中からの350人ものアーティストにチャンスを与えてきたレジデンスが、活動を停止するというのです。

バルセロナは今、混乱しています。

私が滞在していた時は「スペインから独立したい」という声を聞くことはあっても具体的なことは何も起きていませんでした。

私がバルセロナを離れて数か月後、独立とは違う理由でしたが、観光のメッカ、ランブラス通りでテロがあったあたりから妙な流れが始まりました。
その後住民投票で独立の決議があり
最近では毎週、多いときは週に何度も日本大使館からバルセロナの毎日のデモの場所と日程が流れてくるほどです。

観光で成り立っている街だというのに、訪問客が減っているとの発表もありました。

そりゃあそうでしょう。
お行儀のいいデモばかりではないし、便乗した暴動も起きるわけだから。

4年前にこんな状況だったら私だって、いくら滞在アーティストに選ばれたって参加に二の足を踏んでいました。

そんな状況の中、存続が困難になってしまったレジデンス。
本当に悲しいことですが、
同時に「運命」っていうことを思ってしまいました。

だって本当にあと半年後だったら私が参加していたかどうか。

あの時参加していなければ出会えなかった人たちも多いし、何より現在この国にいません。
この国に住んでみて得たものを数えたら、あの時たまたま募集があって、運よくその募集に気が付いて応募して選んでくれて、さらに運よく私の都合もついてここにやって来られたことの奇跡を思わずにいられません。

だってスペインなんて興味を持ったことすらなかったのだからそれまで。

これからもそんな運命の声が聞こえる自分でいたいと思う。
「その時」は自分でもわかっていないのだけれど。

最後に、レジデンスの関係者にもう一度心から感謝を。

そして活動停止のお報せの中、過去の活動を振り返ったアーカイブの中で、Sachiyo KanekoのDiamant広場でのパフォーマンスを代表的な活動の一つとして紹介してくれたことをうれしく、また誇りに思います。

これからも、運命にいただいた種を大事に育てていこうと思います。

書家・美術家 金子祥代 Kinkoちゃん随筆 
http://www.kinkochan.com/
長年古典で培った書の力をベースに世界各地で現代アートの世界を展開中
インスタはこちら☆https://www.instagram.com/sachiyo.kaneko/